小さな会社の年末調整:年調ソフトは大変便利


※令和6年分 所得税の定額減税の仕方・記載方法

(1)給与明細

定額減税(所得税/国税)3万円:
  1. 本人(令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である人)、同一生計配偶者又は扶養親族(いずれも居住者に限る(「同一生計配偶者等」))
  2. 6月分給与・賞与の源泉徴収から順次控除→備考欄に「定額減税額(所得税)xx,xxx円」の記載で足りるでしょう(記載義務)
  3. 住民税(地方税):「特別区民税・都民税(個人住民税1万円減税)は定額減税後の税額を令和6年7月から令和7年5月までの11か月で分割徴収(令和6年6月は徴収を行わず)」と給与明細の備考欄に記載すると親切です
定額減税3万円に伴う記載義務でシステム改変などの事務手続きが大変との意見も見られます。大企業のことはよく知りませんが、中小零細企業のエクセル管理なら上記の文言のコピペで終了です。

そもそも1人会社等で「給与明細」を作成していない場合は無料テンプレート(エクセル)が公開されています。「賃金台帳」とリンクさせれば事務の手間もかなり省けます。

尚、給与明細は「所得税法」で義務(税務署管轄)、賃金台帳は「労働基準法」で義務(年金事務所管轄)となっています。賃金台帳も無料テンプレート(エクセル)が公開されています。未作成の場合は利用すると良いでしょう。

(2)所得税徴収高計算書・賃金台帳・源泉徴収簿/源泉徴収票

  1. 所得税徴収高計算書「摘要」→記載不要
  2. 賃金台帳・源泉徴収簿→減税後の金額(月額)
  3. 源泉徴収簿(年額)→余白に「控除済額」「年調所得税額(定額減税後)」「控除外額(控除しきれない金額)」
  4. 源泉徴収票「摘要」→「源泉徴収時所得税減税控除済額xxx円、控除外額xxx円」と記載
国税庁「定額減税特設サイト」
国税庁「令和6年分所得税の定額減税のしかた」(PDF)
国税庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A」(PDF)

関連記事:
「源泉所得税:所得税徴収高計算書の提出はE-TAX(WEB版)」

年末業務の大まかな流れ

年末年始の大まかな業務の流れは下記の通りです:
  1. 賃金台帳→無料公開エクセル等を利用
  2. 年末調整→年調ソフト🚩
  3. 源泉徴収簿→無料公開アプリ(エクセル)等を利用
  4. 給与支払報告書・合計表・法定調書(源泉徴収票)→eLTAXで一括作成・提出
以下では年調ソフトのやり方を説明しています。従業員がアプリで作成して会社に提出します。

年末調整の控除申告書は基本3つです(各種申告書・記載例):
  1. 扶養控除等申告書
  2. 保険料控除申告書
  3. 基礎控除申告書(令和2年度分から開始)
※住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローン控除を利用する場合(1年目は確定申告、2年目以降は年末調整)

年調ソフトを利用しなくてもパソコン作成すればさほど手間はかかりませんが(PDF入力はInternet Explorer11で入力)、年調ソフトだと控除申告書が一括作成できて大変便利です(控除額を自動計算)。従業員は翌年度以降も基本情報を引き継ぐことができて入力が省略できます。

会社は電子データのやり取りで管理が楽になります。年末調整の業務がペイパーレス化できます(控除証明書のチェックが不要)。

尚、年末調整手続き電子化の税務署の申請は不要となりました(令和3年度の税制改正)。

関連記事:
「給与支払報告書と法定調書:eLTAXで一括提出」
「電子帳簿保存法の改正:小さな会社の対応方法」

年調ソフト(国税庁)の利用手続き(初年度)

(1)ダウンロード

年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)は国税庁が提供するアプリです。従業員が年末調整申告書を簡便に作成し勤務先に電子データか書面で提出できます。

年調ソフトには4つのタイプがあります:
  1. パソコン/Windows→Microsoft Storeで「年末調整 国税庁」と検索
  2. パソコン/Macintosh→Appstoreで「年末調整 国税庁」と検索
  3. スマホ/Android端末→GooglePlayで「年末調整 国税庁」と検索
  4. スマホ/iPhone→Appstoreで「年末調整 国税庁」と検索
パソコン/Windows版のMicrosoft Storeは馴染みがないかもしれません。普通に「年調アプリ マイクロソフト」でGoogle検索しても出てきます。

下記がリンク先です、ダウンロードができます(Microsoft Store/無料):
⇒「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア

サインアップやログインは不要です。

(2)アプリ入力

  1. スタートボタンをクリック→「最近追加されたもの」の一番上の年末調整アプリをクリック(尚、右クリックすると「スタートにピン留め」や「タスクバーにピン留め」ができて便利)
  2. 控除申告書を作成する方はこちら→新しく年末調整の書類を作成する「新規作成」
  3. 入力は「質問に答えて受けられる可能性がある控除を確認」「控除申告書を選んで作成」「申告書データを利用して作成」の中から進めます(初回は「質問に答えて」か「控除申告書を選んで」からがわかりやすいです)
年末調整の控除申告書は基本3つです:
  1. 扶養控除等申告書(翌年度分🚩)
  2. 保険料控除申告書(本年度分)
  3. 基礎控除申告書(本年度分)
※住宅借入金等特別控除申告書:住宅ローン控除を利用する場合(1年目は確定申告、2年目以降は年末調整)

(3)入力のポイント

  • ID番号は控除申告書に印刷されるので名前のアルファベットくらいにしておいた方が無難
  • 会社から指示があればIDに「職員番号」などを入力
保険料や住宅ローンはデータをマイナポータルや契約企業からもインポートできます。少ない場合は入力した方が早いです

[記入のポイント]
  1. 保険料控除申告書の受取人欄には「死亡受取人」か「給付受取人」のどちらかを記入すればよいか?
  2. 一般/介護医療の生命保険料は死亡保険金の受取人
  3. 死亡保障のない保険は給付金の受取人を記入
入力が終わると電子データ(XMLファイル)と書面(PDFファイル)出力できます。書面(PDF)の方が控除申告書になります(申告書の形式が以前と全く異なります)。

内容を確認して何度でも修正ができます。チェックが済めば会社にPDFファイルを送信して終了です。

電子データ(XMLファイル)も必要に応じて会社に提出できます。給与システムにインポートできます。

(4)入力修正や申告書の追加/削除

入力の修正は「詳細を確認する」から修正ができます。申告書の追加や削除もできます。

扶養控除申告書を翌年度分ではなく本年度で作成してしまった場合などです。一見すると追加や削除がないですが基礎控除申告書の「修正」から入り訂正できます。

入力していくと作成する申告書を選択する画面が再び出てきます。正しく選択して再度控除申告書類を作成して印刷します。

年調ソフトの利用マニュアル(次年度以降)🚩

初回以降は前年度データを繰り越すことができ大変便利です。入力項目は変更なければ所得金額(給与所得と給与所得以外)の変更だけになります。アプリの入力手順がアップデートされたようです(令和6年度分)。

[アプリ流れ①:入力準備]
  1. PCスタートボタンからアプリ起動(→前年度データ繰越利用)
  2. 「過去のデータを利用して作成する方」をクリック→過去分の申告書データ移行「はい」※新規の場合は「控除申告書を作成する方」から(→「あなたひとりで使用する」)
  3. 扶養控除等(異動)申告書:「変更なし」または「変更あり」を選択→「閉じる」
  4. →「控除申告書を作成する方」→「新しく控除申告書を作成」→「控除申告書を選んで作成」※電子データ(拡張子.ZIP)があれば「申告書データを利用して作成」→「前年の申告書データを利用して作成」→アップロード
[アプリ流れ②:数字入力]
  1. 所得の見積額を修正→「次へ」
  2. 給与支払者情報インポート:「インポートしない」→「次へ」
  3. 給与支払者の情報の入力→「入力完了」→確認「次のステップに進む」
  4. 証明書電子データのインポート:「インポートしない」→「次へ」
[アプリ流れ③:申告書選択]
  1. 作成する控除申告書を選択:「基礎控除申告書」「保険料控除申告書」「扶養控除等(異動)申告書(翌年度分🚩)」→確定
  2. 扶養親族の情報の入力:「しない」→「入力完了(申告する内容の確認)」→確認「保存して次の申告書作成に進む」
  3. 基礎控除額→確認「保存して次の申告書作成に進む」
  4. 保険料控除(→電子データインポート):「+生命保険料情報を追加する」→「証明書の電子データをインポートする*」→利用する電子データを選択/インポート完了→「申告書作成へ進む」→修正(受取人エラー)→「修正」クリック→修正入力(受取人入力)→「内容を確認した」にチェック→「保存して次の申告書作成に進む」
  5. 内容確認→確定→「次のステップに進む」→「電子データで出力する」(XMLファイルとPDFファイル)→「はい」→「パスワードをかける」→「次へ」→「次へ」→「次へ」→PCダウンロード(XMLファイルとPDFファイル)
*「インポートしない」場合は手入力(前年の年末調整/PDFファイルを参照)


追記:基礎控除申告書で副業がばれる?

基礎控除申告書では「給与収入」と「給与所得以外の所得金」の記入が必要になります。サラリーマンの人は副業がばれるのではと心配になる項目です。

給与以外の所得でも副業に当たらないものもあります(FX収入などの雑収入)。基礎控除額の判定に必要な項目ですので漏れなく計上しましょう(金額のみ見込み額を記入)。

一般に会社の経理は事務的に仕事を進めます。給与所得以外の収入は別途確定申告の要否を各自で判断する必要があります。

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