コロナ禍:米銀行のストレステスト


米銀行のストレステスト/FRB

(1)2020年9月~(今回)

  • 米連邦準備理事会(FRB):自社株買い禁止・第4四半期の配当上限制限の継続について9月末までに決定
  • →2020年末まで延長→2021年自社株買い条件付きで解禁(12/18):ストレステスト(健全性審査)の結果、新型コロナの感染拡大による深刻な景気後退に直面しても自己資本は全ての銀行で最低基準を満たす
  • 新型コロナウイルスのパンデミックの影響を踏まえた分析では対象34行の個別結果を公表(ストレステストの結果は年内公表)、ストレステストで用いるリセッション・シナリオを公表
[2つの追加シナリオ*]
  1. 失業率:12.5%/2021年末→7.5%、GDP:△3.0%(3Q/2020~4Q/2021)
  2. 失業率:11%/2020年末→9.0%、GDP:△2.5%(3Q/2020~4Q/2020)

(2)2020年6月

  • パンデミックの関連分析:全体結果を公表のみ(各行の結果は公表されず)
  • FRBは銀行の自社株買い禁止、第3四半期の配当上限設定(配当総額は過去4四半期平均利益を超えない)
[当初シナリオ]
  • 失業率10%(最悪シナリオ)
[コロナ後追加シナリオ]
  1. 経済成長率が4~6月期年率マイナス31%に下落後急回復する「V字型」
  2. 大幅なマイナス成長後ゼロ成長が続く「U字型」
  3. 2021年に再び大幅なマイナス成長に転落する「W字型」
[34行の貸倒損失(~2022年1~3月期)と自己資本比率]
  1. V字型:5600億ドル→9.9%
  2. U字型:7000億ドル→8.2%
  3. W字型:6800億ドル→7.7%
大手34行の自己資本比率は2019年末時点で平均12%を確保。6月のストレステストにおいても資本は十分と判定された。

リーマンショック時は銀行のバランスシートが毀損し公的増資を注入された。

まとめ:銀行の決算は改善するか

今後の不透明感は高いがリーマンショック時と異なり出口戦略は見えている。ワクチン開発と大量生産を待つのみである。

いずれにせよ大幅な景気縮小を想定した4Q向けのストレステストの結果を待つ必要がある。

米国の失業率はストレステスト想定の12.5%に対して大幅に改善している:
  • 3月4.4%
  • 4月14.7%(最悪期)
  • 5月13.3%
  • 6月11.1%
  • 7月10.2%
  • 8月8.4%(最新/9月4日発表)
銀行の3Q(7~9月)の決算発表は10月中旬から始まる。失業率が最悪期の2Q(4~6月)からは貸倒引当金が減少し収支改善が予想される。

欧州中央銀行(ECB)などの中央銀行は銀行に対して配当中止を要請している。

FRBは「自社株買い禁止」や「配当上限制限」措置を2Q/2020から年末までを延長した:
  1. 資産1000億ドル以上の銀行が対象:JPモルガン・チェースやシティグループ、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカや大手外銀の米国部門など34行に適用
  2. 配当はQ2支払額や過去4四半期の純利益平均を超えない水準;自社株買いについても禁止
FRBが2021年にも配当制限等を撤廃すれば銀行株の上昇が期待できるでしょう。

ストレステスト結果を受けてQ1から配当や自社株買いを開始する銀行が現れるでしょう:
  • 12/18:FRB自社株買い解禁(2021~)、配当制限内での自社株買いと配当を認可(制限措置は2021年3月末まで)
  • 今後は配当金と自社株買いの合計額が直近1年間の純利益額を超えない範囲であれば自社株買いもできるようになる
経済の本格的回復は2021年のワクチン普及を待たねばならないでしょう。ただ株価は実体経済の半年くらい先行する指標でもある。



※投資は自分で勉強してあくまでも「自己責任」でお願いします。👷

追記:*2つの追加シナリオ/FRB

The first scenario—the "severely adverse"—features the unemployment rate peaking at 12.5 percent at the end of 2021 and then declining to about 7.5 percent by the end of the scenario. Gross domestic product declines about 3 percent from the third quarter of 2020 through the fourth quarter of 2021. The scenario also features a sharp slowdown abroad.

The second scenario—the "alternative severe"—features an unemployment rate that peaks at 11 percent by the end of 2020 but stays elevated and only declines to 9 percent by the end of the scenario. Gross domestic product declines about 2.5 percent from the third to the fourth quarter of 2020.

Source:https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/files/bcreg20200917a1.png

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