新型コロナ不況:資金繰り支援と納付猶予制度


政策金融と国税の取組み

  1. 新型コロナにより資金繰りが厳しい事業者向けに「政策金融の資金繰り支援策」と「国税の納付猶予制度」がある
  2. 政策金融の資金繰り支援策:日本政策金融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫・商⼯組合中央⾦庫・⽇本政策投資銀⾏
  3. 国税の納付猶予制度(特例猶予):税務署に申請により1年間納付を猶予・延滞税なし・無担保

納付猶予制度

(1)社会保険料

税金と同様に社会保険料(厚生年金保険料等)の猶予制度があります。原則1年間猶予が認められます(原則無担保)。

管轄の年金事務所に「納税の猶予申請書」の提出が必要です。まずは該当の年金事務所に電話で相談することをおすすめします(延滞前がベター)。

詳細は下記「リーフレット」を参照してください⇒厚生労働省「新型コロナの影響により厚生年金保険料等の納付が困難な場合(猶予制度)」

(2)税金(国税と地方税)

新型コロナに関連して「税金猶予制度」があります⇒国税庁「新型コロナの影響により納税が困難な方へ」

所轄の税務署に「納税の猶予申請書」の提出が必要です。原則1年間猶予が認められます(原則無担保)。

税務署(徴収担当)に電話で相談もできます。納期限前からでも相談できます。

詳細は下記「リーフレット」を参照してください⇒国税庁「新型コロナの影響により納税が困難な方には猶予制度があります」

地方税(県税・市税)についても同様の「税金猶予制度」があると思います。まずは該当の自治体に相談することをおすすめします。


新型コロナに関する借入

新型コロナの影響で資金繰りが厳しい中小企業は全国に拡がっています。先行きが見通せない所が今回の不況の厳しいところです。

迷わずつなぎ資金(借入金)を検討しましょう。しばらくは通常売上に戻らないと考えて借入計画を練りましょう。

借入には下記3つのコースが考えられます:
  1. 既に銀行からの借入がある→「取引銀行」に申込(制度融資など対応が早い)
  2. 銀行からの借入がない→「日本政策金融公庫」や「商工中金」など公的金融機関に相談
  3. 商工会議所や商工会などの経営指導を受けている→「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」に申込
1と2は基本的に同じ制度融資で窓口の違いです。以下では2の「銀行借入がないケース(日本政策金融公庫)」を取り上げています。

(1)日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は「新型コロナウイルスに関する制度融資」を提供しています:
  1. 個人企業・小規模企業→「新型コロナウイルス感染症特別貸付【国民生活事業】
  2. 中小企業→「新型コロナウイルス感染症特別貸付【中小企業事業】
  3. 生活衛生関係事業【国民生活事業】→「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
  4. 農林漁業者等【農林水産事業】→「農林漁業セーフティネット資金
小規模事業の資金繰り対応では1の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が該当します。実際は電話で予約をして借入相談に行くのが早いと思います。

(2)融資条件

新型コロナウイルス感染症特別貸付「国民生活事業」の融資条件は下記の通りです:
  1. 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して「5%以上減少」
  2. 融資限度額は「別枠で8000万円」
  3. 6000万円を限度として当初3年は基準利率から「0.9%低減」した利率が適用
  4. 融資期間:運転資金は15年以内(据置期間5年以内)・設備資金は20年以内(据置期間5年以内)
  5. 利子補給を受けることにより当初3年間が実質無利子

(3)提出書類

新型コロナウイルス感染症特別貸付の「提出書類」は下記の通りです:
  1. 借入申込書」(公庫定型書類)
  2. 「新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書」(公庫定型書類)
  3. 商売の概要・企業概要書
  4. 申告書・決算書(最近2期分)
  5. 履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人)
すぐには回復しないとして借入計画を作った方が無難です。

借入期間(据置期間)は最大限長期にして当面の毎月返済額を最少にすることが重要です。銀行ローンは余剰資金ができれば途中返済もできますが追加融資は困難です(銀行の性質)。

(4)ベンチャー融資(日本政策金融公庫)

ベンチャー企業は上記の新型コロナ融資の対象にならない場合があります。

創業間もない場合は他の制度融資があります(日本政策金融公庫):
  1. 新規開業資金
  2. 女性、若者/シニア起業家支援資金

まとめ:まずは相談

資金繰りは時間との闘いです。融資や税金猶予などの相談は早めに行くことをおすすめします。

どこも混んでいて待たされることが予想されます。切羽詰まったときに待たされるとイライラして良い結果をもたらしません。

日本政策金融公庫は提出書類を該当店舗に「直接郵送」することもできます⇒「日本政策金融公庫:店舗案内」

インターネット申込もできますが融資までの流れを見ると時間がかかりそうです。必要書類を準備して直接郵送か訪問相談した方が早そうです。

資金繰り計画に他力本願や楽観主義は禁物です。コロナの行方は誰にもわかりません。悲観的に予測を立て大切な事業を自衛しましょう。

関連記事:
「新型コロナ不況:個人の資金繰り対策(派遣切り・失業など)」

追記:資金繰り支援

(1)政府系金融機関

1.新型コロナウイルス感染症特別貸付
〔⽇本政策⾦融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫〕
  • 【国⺠生活事業】(⽣活衛⽣含む)上限8千万円(別枠)、設備資⾦20年以内,運転資⾦15年以内,据置期間5年以内、無担保、当初3年間基準利率-0.9%,3年経過後基準利率
  • 【中⼩企業事業】上限6億円(別枠)、設備資⾦20年以内,運転資⾦15年以内,据置期間5年以内、無担保、当初3年間基準利率-0.9%,3年経過後基準利率
  • 〔①マル経融資、②衛経融資〕上限3千万円(別枠)、対象:①商工会議所,商工会,又は都道府県商工会連合会 の実施する経営指導を受けている小規模事業者(推薦要),②生活衛生関係の事業を営んでおり生活衛生同業組合等の実施する経営指導を受けている小規模事業者(推薦要)
2.危機対応業務(中⼩企業向け)
〔商⼯組合中央⾦庫〕
  • 【融資(シニアローン)】上限6億円、設備資⾦20年以内,運転資⾦15年以内,据置期間5年以内
  • 【資本性劣後ローン】上限7.2億円、5年1か⽉・10年・20年(⼀括償還)
3.実質無利⼦化~新型コロナウイルス感染症特別貸付特別利⼦補給制度~
〔⽇本政策⾦融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫・商⼯組合中央⾦庫〕
  1. ⽇本政策⾦融公庫及び沖縄振興開発⾦融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」等
  2. 商⼯組合中央⾦庫の「危機対応融資(中⼩企業向け)」により貸付を⾏った中⼩企業
  3. 特に⼤きな影響を受けた事業性のある個⼈事業主(フリーランスを含む)、売上⾼が急減した事業者など
4.既往債務の借換・既往債務の条件変更
〔⽇本政策⾦融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫・商⼯組合中央⾦庫等〕
  1. ⽉々の返済を当⾯の間猶予
  2. ⽉々の返済⾦額の減額や返済期限の延⻑
5.資本性劣後ローンの創設~中⼩企業向け資本性資⾦供給~
〔⽇本政策⾦融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫〕

新型コロナの影響を受けた事業者であって以下のいずれかに該当する者:
  1. J-Startupに選定された事業者⼜は中⼩機構が出資する投資ファンドから出資を受けた事業者
  2. 再⽣⽀援協議会の関与のもとで事業の再⽣を⾏う事業者
  3. 事業計画を策定し⺠間⾦融機関等による⽀援を受けられる等の⽀援体制が構築されている事業者
  • 【中⼩事業・危機対応】限度額7.2億円(別枠)、20年・10年・5年1か⽉(期限⼀括償還)、無担保・無保証⼈
  • 【国⺠事業】限度額7.2千万円(別枠)、20年・10年・5年1か⽉(期限⼀括償還)、無担保・無保証⼈
6.衛⽣環境激変対策特別貸付
〔⽇本政策⾦融公庫(国⺠⽣活事業本部)・沖縄振興開発⾦融公庫〕

新型コロナで資⾦繰りに⽀障を来している旅館業・飲⾷店営業及び喫茶店営業を営む⽅の経営の安定を図るための特別貸付制度
  • 【旅館業向け】上限3千万円(別枠)、7年以内(うち据置期間2年以内)、基準⾦利(貸付期間・担保の有無等により変動)
  • 【飲⾷店営業及び喫茶店営業向け】上限1千万円(別枠)、7年以内(うち据置期間2年以内)、基準⾦利(貸付期間・担保の有無等により変動)
7.セーフティネット貸付
〔⽇本政策⾦融公庫・沖縄振興開発⾦融公庫〕

外的要因により業況悪化を来しているが中期的には回復が⾒込まれる中⼩企業の経営基盤の強化を⽀援する融資制度
  • 【中⼩企業】融資限度額7.2億円、設備資⾦15年以内,運転資⾦8年以内,据置期間3年以内、基準⾦利(貸付期間・担保の有無等により変動)
  • 【国⺠事業】融資限度額4.8千万円、設備資⾦15年以内,運転資⾦8年以内,据置期間3年以内、基準⾦利(貸付期間・担保の有無等により変動)
〔⽇本政策⾦融公庫(国⺠⽣活事業本部)・沖縄振興開発⾦融公庫〕

振興計画の認定を受けた⽣活衛⽣同業組合の「組合員」を対象とした融資制度
  • 【⽣活衛⽣】融資限度額5.7千万円、運転資⾦8年以内,据置期間3年以内、基準⾦利(貸付期間・担保の有無等により変動)
〔⽇本政策⾦融公庫(農林⽔産事業本部)・沖縄振興開発⾦融公庫〕

災害や経営環境の変化等経営者の責めに帰さない理由により⼀時的に経営状況が悪化した農林漁業者を対象とした融資制度
  • 【農林漁業】融資限度額①1.2千万円,または②年間経営費の12/12相当額⼜は粗収益の12/12相当額のいずれか低い額、運転資⾦15年以内,据置期間3年以内、実質無利⼦化・実質無担保
8.危機対応業務(中堅・⼤企業向け)
〔⽇本政策投資銀⾏・商⼯組合中央⾦庫〕

新型コロナによる影響を受け業況が悪化した事業者に対し危機対応融資や資本性劣後ローンによる資⾦繰り⽀援を実施、中堅企業向けについては▲0.5%利下げ(当初3年間)を実施
  • 【融資(シニアローン)】融資限度額原則上限なし、設備資⾦20年以内(据置期間5年以内),運転資⾦15年以内(据置期間5年以内)、通常⾦利
  • 【資本性劣後ローン】融資限度額原則上限なし、⻑期⼀括償還、通常⾦利

(2)民間金融機関

1.セーフティネット保証【信⽤保証】
  • 【セーフティネット保証4号】上限2.8億円(別枠)
  • 【セーフティネット保証5号】上限2.8億円(別枠)
2.危機関連保証【信⽤保証】
  • 全国・全業種の事業者に対して上限2.8億円(別枠)

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